2019年12月25日水曜日


ココロの言葉(111)

 

教室を探究の共同体に変える

教育哲学者 マシュー・リップマン(1923-2010)

 
「探究の共同体」とは、生徒たちが日常生活に潜んでいるさまざまな課題に対して、

お互いの対話を通して、自由に考える空間のことです。その目的は自分を縛りつけている思い込みに気づき自由になることです。

このような教育実践を教育哲学では「哲学対話」と呼んでいます、古代ギリシャ以来の教育(共育)の核となっている理念でもあり実践法でもあります。

そして現在、これこそが日本の学校教育で求められていることでしょう。

2019年12月18日水曜日


ココロの言葉(110)

 

ああー、おもんない。なえた。

人生いろいろありすぎ。それが人生。

居場所カフェでの高校生の言葉

 

いま、学校内に「居場所カフェ」をつくる取り組みがなされています。その主な目的は、生きづらさを抱える高校生への寄り添い型の支援です。閉鎖的で均質な校内で、図書館や空き教室を使って、交流の場を設けます。ドリンクやお菓子を無料で提供して、教師や親以外の地域の大人たちと話ができる空間です。現在、神奈川と大阪の約30の公立高校で週一回開催されています。

この居場所カフェは、家庭(ファーストプレイス)や学校(セカンドプレイス)の人間関係を補う「サードプレイス(第三の場)」として、子どもたちの生きづらさのストライクゾーンを広げることにつながっています。家庭と学校の隅間を埋める教育支援として注目されています。

2019年12月11日水曜日


ココロの言葉(109)

 

私の心の中は戦いの庭だ。

ナバホ族の格言

 

最近の心理学の研究では、わたしたちの日常の思考の約8割は、ネガティブなものであると言われています。アメリカ大陸の先住民であるナバホ族では、ワツ(善良さ、ネガティブ思考)とオオカキ(卑しさ、ネガティブ思考)の戦いと表現されています。

そこで、その勝負はどうなるのか?その答えはとても明解です。

「エサを与えた方だ」と。

子どもたちの心理的サポートをするときにも応用できる原理です。子どもの視点に立って、一人ひとりの成長につながる支援をしたいものです。

2019年12月4日水曜日


ココロの言葉(108)

 

いのちの意味がわからず、自分の存在の意味を見いだせず、

社会からはみ出していると感じている人が多くいます。

家庭、学校、共同体は、一人ひとりが支えを思い出し、

他者を支える場であるべきなのに、利益とか効率を追求する過剰な競争意識によって

ますます傷ついて、多くの人が当惑し、不安を感じています。

フランシスコ教皇

 

この言葉は、今回訪日したフランシスコ教皇のメッセージです。こんな現代社会の状況で、多様性の存在を認める社会の実現が求められていると訴えています。

そして、多様性の尊重は、いま日本の学校教育の大きな課題になっています。子ども一人ひとりがみんな違っているのに、いまだ画一的な集団教育と競争主義が促されてされています。このことに子どもたちはすでに気づいています。

真に調和のある人間的な社会のために、いま大人の意識の変革が問われています。

2019年11月27日水曜日


ココロの言葉(107)

 

いかに社会が変化しようと、

自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、

よりよく問題を解決する資質や能力を育成する。

中央教育審議会「21世紀を展望した我が国の教育の在り方」について」

 

私たちはいま、AIによる技術革新によって、社会構造が大きく変わりつつある環境に生きています。その影響を受けて、学校教育も変わらなければならない状況にあります。

従来の学校教育は、出来合いの知識をいかに多く憶えるかが学習目標でしたが、いま必要なことは、正解がない課題を主体的に探究する学習スタイルです。すなわち、「自分自身で考える」ことができる学習支援をしていく学びが求められています。

2019年11月20日水曜日


ココロの言葉(106)

 

不登校児童生徒への支援は、

「学校に復帰する」という結果のみを目標にするのではなく、

児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、

社会的に自立することを目指す必要があること。

「不登校児童生徒への在り方」文科省・新通知 2019・10・25

 

今回の新通知のポイントは、「学校復帰に捉われない」という点にあります。

従来のように学校復帰を前提とするのではなく、社会的に自立を目指して支援する方針が定まられました。

この新通知により、学校復帰を第一目的にするのではなく、子どもの個別の状況に応じた適切な対応が求められています。そのためにまずオトナがしなければならないことは、保護者と教師の意識の変革でしょう。

2019年11月13日水曜日


ココロの言葉(105)

 

教えることは、希望を語ること。

学ぶことは、誠実さを胸に刻むこと。

ルイ・アラゴン「ストラスブーグ大学の歌」1943年

 

学校教育は、子どもたちに読み・書き・算術だけを教えることが目的ではありません。

大事なことは、教師は子どもたちに生きる「希望を語ること」であり、そして、学ぶことは、子どもたちの魂の誠実さを育てることであると歌っています。

現代の偏差値重視、競争主義の教育で見失われている大事なことを思い出させてくれる歌詞です。

2019年11月6日水曜日


ココロの言葉(104)

 

世界は変わり続けている。

学校で学ぶことは、学校を出て10年や20年すれば、

時代遅れになってしまう。

ハンス・ロスリング博士(1948-2017)

世界的ベストセラー『ファクトフルネス』より

 

ユニセフやWHOの国際援助機関のアドバイザーをしていたグローバ思想家の言葉です。

世界の出来事を「事実(ファクト)」に基づいて見ると、いま時代は劇的に変遷していることがわかります。それを明確に示したのが「ファクトフルネス」です。

その結果明らかになったことは、世界情勢は全体的によくなっているということでした。

例えば、子どもたちへの教育分野でも、識字率は高まっています。

そして、ロスリング博士はこう語っています。

「だから、大人の知識をアップデートする方法も見つけなければならない」と。

 

 

2019年10月30日水曜日


ココロの言葉(103)

 

必用なだけ助ける(Assist As Needed)

リハビリテーションの原理

 

リハビリの領域で最近よく言われている原理で、すべてを助けることが、

その人によくなく、回復につながらないことがわかってきました。

その人が本来持っている能力を引き出すことが大切ということです。

これこそが、子どもの学習支援に通じる有効な実践法でもあります。

 

2019年10月23日水曜日


ココロの言葉(102)

 

子どもたち一人一人が自分の設計図をもっているユニークな存在であり、

「違っている」ことは、動かしがたい科学的な事実なのです。

教育学者 大田尭

 

今月、文科省が2018年度の不登校の調査結果を発表しました。小学中学生の人数は、

16万4千528人でした。この6年間で、少子化にもかかわらず、毎年増加傾向にあります。

不登校になる理由は、個人的にさまざま挙げられていますが、「学校の子どもたちへの不適応」という視点も考慮しなければならないことを、この数字が示しているのではないでしょうか。すなわち、子どもの学校への不適応というよりは、学校教育のシステムが不適応を起こしていると―。

2019年10月16日水曜日


ココロの言葉(101)

 

子どもたちは多様な個性、多様な状況を生きています。

子どもたちが主体的に育ち、

それぞれのかけがえのないいのちの力を十分に発揮し、

社会の中で存在感を得ながら幸せに生きていくには、

多様な学び・育ちが選べる社会になることが必要です。

奥地圭子(東京シューレ代表、『明るい不登校』より)

 

現在、少子化にもかかわらず、年間30日以上欠席の不登校の小中学生が、14万4千人います。1000人当たりでは、小学生が約5人、中学生が33人になります。これは、文科省の調査によるデータですが、その周辺の子どもたちの数は、さらに多く存在することが推測できます。

この数字を見ただけでも、いまの規制の学校以外の学びの場が必要とされていることがわかります。多様化している子どもたちへの学びに応えていく新しい教育システムが求められています。

 

 

2019年10月8日火曜日


ココロの言葉(100)

 

誰かが絶えず自分のことで尽力していることを知ることで、

子どもは自分には「仲間」いる、と実感できる。

アルフレッド・アドラー(心理学者 1870-1937)

 

個人心理学の創始者と呼ばれるアドラーの子どもへの接し方について語った言葉です。

ここでいう「仲間」とは、キリスト教でいう「隣人(愛)」を意味しています。仏教的には「利他(行)」のことです。心理社会学的には、お互いに対等な関係で対応する姿勢です。

そのような子どもの実感が、学習意欲を高めることにつながります。子どもと接するときに、一番大切にしなければならないことでしょう。

 

 

2019年10月2日水曜日


ココロの言葉(99)

 

子どもたちには、

「なにを言うか」よりも、

「どんな態度で表すか」が大切。

日本授業UD(ユニバーサルデザイン)学会通信 2019・9・27

 

子どもたちに対応するときに、支援者がなにを伝えるかよりも、どのように伝えるかが、重要なポイントになります。大人からの上から目線ではなく、人として対等な関係で支援することが、適切なサポートにつながります。

そのような対応が、いつ、どこで、だれが実践してもうまくいくユニバーサルデザインに基づく学習支援になります。

2019年9月25日水曜日


ココロの言葉(98)

 

学力を左右するのは、けっして教科学習だけではないからです。

幼少期からの様々な体験によって培われる様々な能力が,

直接的あるいは間接的に学力に影響を与えています。

教育社会学者 土井隆義

 

一般的に、子どもの学力は、学校や家庭での教科学習で決まると思われていましたが、

お茶の水大学の「家庭の社会経済的背景と子どもの学力の関係」研究で、子どもの学力の要因が教科学習だけではないことが判明しました。

それでは、子どもの学力に影響するその他の要因は何か。

学習支援の現場から見えてくることは、子どもの学習意欲のサポートです。動機付けが適切であれば、自主的に学習し、学力も向上していきます。本無料塾では、それを大事にしています。

2019年9月18日水曜日


ココロの言葉(97)

 

人間は相手がいなければ存在できません。

あなたが私に対して人として尊重した態度を取り、

人として尊重して話しかけることによって、

私は人間になります。

ユマニチュード創設者・イブ・ジネスト

 

「ユマニチュード」とは、人間らしさの尊重を核としたケアの技法です。その理念を的確に表したのがこの言葉です。「人間とは」「ケアするとは」を問う哲学に基づき、150以上のケアの技法があります。

現在は、主に医療と介護の分野で活用されていますが、教育の世界でもそのまま活用できる理論と実践法にあふれています。特に、子どもたちに対応するときにもっとも重要なことはなにか? 

それは、お互いの尊重に基づく「絆」であることを教えてくれます。

2019年9月11日水曜日


ココロの言葉(96)

 

見えている症状の後には、

その子だけの苦労があって、

本当は一人ひとりの助け方も違うんです。

向谷地宣明(コミュニティホーム「べてぶくろ」主宰)

 

子どもたちへの学習支援で大切なことは何か。

その必要条件は、安心して学べる環境であることです。

そして、十分条件はその子が「ありのまま」の自分でいられることでしょう。

この二つの条件が整えば、子どもたちは、自ら学んでいくように思います。

 

2019年9月4日水曜日


ココロの言葉(95)

 

小学校からプログラミングを勉強したり、

3年生から英語を始めることが大切なのではなく、

必然性とリアリティをもって学ぶことで、

読解力はついてくると思います。

新井紀子(国立情報学研究所教授)

 

高度情報化時代に、子どもたちに必要なことは、「読解力」だと新井氏は指摘しています。

人間がもつ読解力は、AIが不得意なスキルで、これからの社会で求められる能力です。

それを養成する要素が、自ら学習する必然性とリアリティであると。

私たちが、学習支援するときに、もっとも大事にしなければならない姿勢であることを教えてくれます。

2019年8月29日木曜日


ココロの言葉(94)

 

育児と子育ては、経済的発展と同義であり、

両立しなければ、国の未来はない。

社会福祉学者 石川瞭子

 

日本の子ども・家庭に関する福祉政策は、北欧などの先進国に比べると、

数十年遅れているといわれています。マスメディアでも報道される子どもの虐待事件が、

それを物語っています。

最近では、「教育虐待」という事件が取り上げられています。親が子どもの人権を侵害して、強制的になされる教育的暴力です。虐待事件は、一人ひとりの子どもの人権を尊重した育児と子育てが、社会の安全と安心の確立にとって、いかに大事であるかを教えてくれます。

児童期と思春期では、子どもへの学習支援が、虐待の予防策でもあり、最大の支援になります。子どもの意志と人格を尊重した学習支援が、いま求められています。

 

 

2019年8月21日水曜日


ココロ(93)

 

「学んで成長する自分」を確信した子どもは、

困難や危機を自己の成長につなぐことができる。

心理学者 中原美恵

 

10代で親になった女性の支援をしている中原氏は、彼女たちの多くは、

子ども時代に学ぶことの意味やそれが自分を支える力になることを実感できず、

学んで成長する過程を拒否している、と言います。そして、人と繋がらないで、自ら逃げて孤立していく傾向があると。

10代の児童期・思春期に、自ら学んで成長する体験が、その後の人生に大きく影響することが、この研究からわかります。そして、学びの大切さが―。

2019年8月15日木曜日


ココロの言葉(92)

 

子どもには、自分を育てる力が備わっている。

マリア・モンテッソーリ(医師・教育家 1870~1952)

 

日本では乳幼児期の教育としてよく知られているモンテッソーリ教育は、思春期の子どもの学習支援に有効な知恵にあふれています。その一つが、「自己教育力」という言葉です。

子どもは適切な環境を整えてあげれば、自発的に学習に取り組む内在的な力があるという考え方です。そして、モンテッソーリ教育では、子どもにとって不必要な援助は、発達の障害になると言っています。

自己教育力の尊重は、一人ひとりの子どもの自立を促し、自由な生き方ができる人間を育てる教育法であり、いま学校教育でも重視すべき概念でしょう。

 

 

2019年8月7日水曜日


ココロの言葉(91)

 

大人たちが解決策が見つからない、としたり顔で言っているような問題も

子どもたちは、軽くとび越えていくと思う。未来はそんなに悪くない。

あの子たちを見ていると、そう信じられます。

ブレイディ・みかこ(保育士・ライター・コラムニスト)

 

「あの子たち」とは、いま英国で多様性や社会的な包摂が大切という保育・教育を受けてきた世代の子どもたちのことです。英国で保育士をしていて、現場の子どもたちを観察して出てきた実感でしょう。

日本の学校教育でも、子どもたちを観察していると同じように思うことがあります。

いまを生きる子どもたちのセンスと能力を邪魔しない自主性を尊重する教育支援が、大人たちに求められています。

 

2019年8月1日木曜日


ココロの言葉(90)

 

これからの教師の力とは、すべての子どもの学習権の保障を前提にして、

人の支援を活用する力をつけることです。

木村泰子(大空小学校初代校長)

 

学校教育で教師がプロフェッショナルとして身につけなければならない能力は、

専門知識や集団指導力とか、その他たくさんありますが、木村氏は「人の力を活用する力」であると明言しています。 

かつてのように「学級王国」の王様として担当教師が、クラスの子どもの対応をすべてしなければいけない時代は終わったと。そもそもそんなことはできないし、子どもの真の成長に結びつかないと言えます。では、どうすればいいのか。

それは、その子どもに最適な対応ができる人に頼めばいいのです。そのような人の支援を活用する力が、いまの教師に求められています。

2019年7月24日水曜日


ココロの言葉(89)

 

これまでのルールとシステムが通用しなくなってきている。

古い世代にはわけのわからない変化が、今まさに起こり始めている。

ワクワクする未来が迫っている。

蓑輪厚介(幻冬舎編集者)

 

時代の大きな変化が、学校臨床にも顕著に現れてきています。その見えない変化を察知しているのが鋭敏な子どもたちです。

炭鉱のカナリヤのように学校の「時代遅れ」を感じて、息苦しさを訴えています。

教育関係者は、彼らの声に耳を傾け、安全で健全な環境を再構築する必要があります。

 未来を生きる子どもたちが、ワクワクできるために。