2017年6月26日月曜日


 

ココロの言葉(6)

 

親が自分のことで困っている姿をみるのが、一番の悩みだった。

不特定多数の不登校体験者の声

 

不登校をすることは、よくないことなのか。

学校へ行かない、または行けない子どもに問題があるからなのか。

その理由と責任を子どもに求めることが適切なのか。

いま改めてこのことを考えてみなければならないのではないでしょうか。

 

そのことを客観的に検討するのに役立つのが『未来の学校』(*)という本です。著者は、ハーバード大学のイノベーション研究所の研究員のトニー・ワーグナー氏で、21世紀の学校教育に求められているものをさまざまな研究成果を踏まえて提案しています。

 著者は、これからの未来社会を創造していく子どもたちを育てる優れた授業の要素を、次の三つ挙げています。

1)生徒自らが学び続ける能力の育成をすること

2)子どもたちの学びの動機付けをすること

3)学習の達成度をペーパー試験ではなく、「パフォーマンス評価」ですること

 

 これら3要素は、まさに学校教育の実践に求められていることであることは、学校臨床に携わる人たちが実感していることです。

 いま学校教育が、抜本的に変わらなければならないときにきています。

最近、学校で不適応を起こす子どもたちの姿を見ていると、変わらなくてはいけないのは、学校の古いシステムではないか。子どもたちを無理やり従来のやり方に適応させるのではなく、子どもたちのニーズに適した教育支援が求められているのでしょう。

 不登校の子どもたちは、現代社会における「炭鉱のカナリヤ」として教育的危機とその改善を訴えかけているように思います。

 

 *『未来の学校』トニー・ワグナー、陳玉玲訳、玉川大学出版会、2017

2017年6月19日月曜日


ココロの言葉(5)

 

いじめがあるのに気がつかない、そんなことがよくあるものです。

いじめはある順番で進行していくのですが、この順番が実に巧妙で、

だから気がつかれにくいのです。

  中井久夫(『いじめのある世界に生きる君たちへ―いじめられっ子であった精神科医の送る言葉』から)中央公論社、2016

 

精神科医で、いじめられ体験がある中井久夫氏は、いじめが進んでいく段階を次の三つに分けています。

第一段階は、「孤立化」で、いじめのターゲットにされ、その理由を周囲に周知されます。

第二段階は、「無力化」で、反撃は無駄だと被害者に観念させます。

第三段階は、「透明化」で、いじめが普通の風景になり、見えなくなってしまいます。

これらのプロセスを経て、被害者を奴隷のような人間にしてしまうのが、いじめの構造です。

では、その対策は、どうすればいいのでしょうか。中井氏は、シンプルに以下のように語っています。

 

「まずいじめられている子どもの安全の確保であり、孤立感の解消であり、二度と孤立させないという大人の責任ある補償の言葉であり、その実行である。」

 

そして、本書では、もうひとつ注目すべき言葉が書かれています。それは、現代精神医学のマスターセラピストの一人といわれるミルトン・エリクソンの指摘です。心理療法を学んでいる弟子が、子どもの面接を二週間延期したことに対して、「子どもにとって二週間は、永遠に等しい」と叱っています。

 

困っている子ども、被害にあっている子どもにとって、苦痛な時間は永遠に続くように感じます。ですから、周囲の大人たちは、子どものSOSに早期に気づき、迅速に必要なサポートをすることがいかに大切かを教えてくれます。