2023年12月24日日曜日

ココロの言葉(315) 生きていくために、どれだけ他人の手が必要となっても、 それはお互い様なので、今を生きているこの人の、 生きるための時間、空間を支えていく。 高口光子(元気がでる介護研究所所長) 介護の現場に十数年にわたって仕事をしてきたプロフェッショナルの言葉です。まったく同じことが教育現場でも言えるのではないでしょうか。「介護とは、人と人とのつながりから、人が生きていく力を引き出すことだ」とも―。ギリシャの哲学者ソクラテスが、「教育とは産婆術」だといった言葉と同期します。

2023年12月17日日曜日

ココロの言葉(314) 限りなき命の次に大事なこと。 それは、その命の使い方だ。 村田慎二郎(国境なき医師団日本事務局長) 国境を越えて世界の紛争地で医療支援をしている日本人の事務局長からのメッセージです。日本という平和な社会に暮らせていること自体が、圧倒的に恵まれた存在であり、夢を追いかけないのはもったいないことだと。そして、だれかの希望になれるような命の使い方が求められていると主張しています。『世界一過酷な場所で見つけた命に次に大事なこと』から.

2023年12月10日日曜日

ココロの言葉(313) 現在を未来の道具にする達成主義の生き方ではなく、 いまを大事にして生きることが幸せにつながる。 社会学者 宮台真司 ここ数十年で空洞化した日本で、社会の道具としてクズのような生き方ではなく、ひとりの人間としていかに幸せに生きるか? それには、そばにいると自分に力を与えてくれる人との信頼関係をつくることだと、若者たちに向けて社会学者は提言する。未来のためではなく、いま現在を大事にして生きることが大事だと―。

2023年12月3日日曜日

ココロの言葉(312) 人生につまずき、心が弱っているときこそ、 その人を信じ、その人の好さ、その人らしさに、 気づいてくれる誰かが必要だと思います。 そこからまた、希望を胸に新しいスタートを切るための 「支え合い」―。 高橋淳(『ブラック支援―狙われるひきこもり』から) 2022年度の調査では、中高年(40~64歳)のひきこもりが約61万人、15歳から39歳のひきこもりが約100万人います。人口70万人の東京都江戸川区では、76人に1人が、また秋田県藤里町では29人に1人がひきこもり状態だといいます。いま、カネと暴力によるブラック支援ではなく、善意の「支え合い」が求められています。

2023年11月26日日曜日

ココロの言葉(311) そこには正解がなくて、 僕としては「やったことが正解」 というだけなんです。 大リーガー 大谷翔平 いまや米国と日本ではもちろん、世界的にヒーローになっている大谷翔平選手の実直な言葉です。プロ野球の世界では、投手とバッターの両立など不可能だとされていたことを成し遂げました。そして、「誰もやったことがないといわれていますが、誰もやったことがないからこそ、やっているんですから」と。(『道ひらく、海わたる―大谷翔平の姿』から)

2023年11月19日日曜日

ココロの言葉(310) 点と点はいつかつながるものだと信じることだ。 何かを信じること―直観、運命、人生、カルマでも。 このやり方でうまくいかなかったことはない。 むしろ人生を大きく変えてくれた。 スティーブ・ジョッブス アップルの創始者でいまや伝説の人物になっているジョッブスが、逆境の時に、自分の心をポジティブに変えるマインドセットです。その核心は、なにかを「信じること」だといいます。自分の人生をよりよい方向に導いてくれるハイヤーパワーに身を任せろと―。

2023年11月12日日曜日

ココロの言葉(309) 何よりも大切なのは、 子どもたちが幸せな人生を送れるようにすることで、 その第一歩は、子どもたちがどのように考えたのか、 それをどうやって学ぶのかを理解すること。 動物科学者 テンプル・グランデン 現代の学校は、時代錯誤の画一的な言語思考重視のペーパー試験制度に偏っているために、その枠に収まらないタイプの子どもたちの才能がふるい落とされているという。これからの時代は、言語思考と同等に、視覚思考タイプ(ビジュアルシンカー)の能力を活かすことが大切であると指摘している。『ビジュアルシンカーの脳―絵で考える人々の世界』から。

2023年11月5日日曜日

ココロの言葉(308) バラの花とそのトゲ 人生の悲しみと喜び 二つはつながっている シーラーズ・サラディ(ペルシャの詩人 1210-1292) シーラーズ・サラディは、13世紀のペルシャ(現代のイラン)の代表的詩人で、イスラム神秘主義スーフィーの師匠としても知られています。私たちの人生での学びの意味について示唆を与えてくれます 。イラン史上最高の傑作とされている『バラの園』から。

2023年10月29日日曜日

ココロの言葉(307) 子供とは、無限のアクセルと無限のブレーキを あわせもった存在だといえるでしょう。 私たち大人の罪深い善意は、 彼らのブレーキをはずさずに そのアクセルだけを吹かすことを奨励します。 能楽師 安田登 私たち大人は、子どもの健全な成長を促そうと願いながら、アクセルとブレーキを同時にかけている、と子どもたちに能を教えている能楽師は指摘します。アクセルを吹かし檄を飛ばすよりも、ちょっとブレーキを外してあげれば、子どもたちは、それだけで自然に自主的に前進していくと。『日本人の身体能力を高める「和の所作」』から。

2023年10月22日日曜日

ココロの言葉(306) 人生には大切な日が二日ある。 ひとつは自分が生まれた誕生日。 もうひとつは、何のために生まれたか? それを見出した日。 マーク・トェイン(米国の作家 1835-1910) 激変する時代を生きる子どもたちに求められている教育は、一体なんだろうか? それは、人生の意味と目的を見出すのに役立つ知識と経験の環境を提供することかもしれない。それこそがアート(芸術)としての生き方としての学びであろう。

2023年10月15日日曜日

ココロの言葉(305) 支援を求める先はいくつあってもいい。 いつかどこかで少しでも手を差し伸べてくれる人に、 出会えるかもしれません。 不幸が度重なることはだれにもあります。 助けを求められる環境や支援が必要です。 黒田公美(行動神経学) 2022年の児童相談所の虐待相談件数が、約22万件以上あった。虐待加害者の脳研究をしている黒田氏は、実刑判決を受けた38人の調査をし、その多くが虐待の「被害者」であり、子育ての相談をだれにもできなかったという。虐待をした親への支援はもちろん、その他子育てのことで困っている人への支援の必要性を問いています。

2023年10月8日日曜日

ココロの言葉(304) 平均によって得られた科学的な一般性とは異なる場所に 普遍と理念がある、 精神分析学者 村上靖彦 現代社会では「エビデンス」が重要視されています。エビデンスとは、科学的な方法で取り出された統計的な事実を言います。そこには個人の経験や偶然がありません。 一方、私たちの日々の生活と人間関係は、パーソナルな主観的な対話で形成されていています。エビデンスに基づく事実は、必ずしも「真実」ではありません。「客観性の落とし穴」に注意する必要があると―。(『客観性の落とし穴』から)

2023年10月1日日曜日

ココロの言葉(303) 家族以外に相談できる大人がひとりいることが、 その子の人生を救う。 タンザニアの格言 アフリカのタンザニアに伝わる子育ての極意の言葉です。小さなブンジュ村では子どもが5歳になったら、相談できる大人を決めるルールがあるといいます。家族だからできることがたくさんありますが、逆に家族でない他者だからできることも豊かな子育てに必要です。そんな信頼できる他者の存在が、日本の社会で求められているのではないでしょか。

2023年9月24日日曜日

ココロの言葉(302) 自分にできることは何だろう それを見つけるために 僕は今日も歩き続ける 誰のために? 自分のために それから 歴史に残らない誰かのために 東田直樹「誰かのため」(『自閉症が30歳の僕に教えてくれたこと』から) 作者は、これは「生きていくために僕と同じように大変な思いをしている人」への一編の詩であると語っています。この世に生まれてきただれもが、誰かの希望になっている。そういう存在であると―

2023年9月17日日曜日

ココロの言葉(301) 自己愛とは「自分が好き」という感情ではなく、 「自分自身でありたい」という欲望のことである。 精神科医・斎藤環 青年精神病理学が専門の斎藤氏によると、自分を「ダメな人間」、「生きる価値がない」とディスリ続ける「自傷的自己愛」のケースが増えているという。自分自身の愛し方がわからない若者たちです。そのやわらげ方は、自分が好きなことをすること、身体のケアをすること、そして、親愛なる対人関係をつくることにあると提言しています。 『「自傷的自己愛」の精神分析』から。

2023年9月10日日曜日

ココロの言葉(300) 幸せな人生を送るための言葉 ありがとう。 おかげ様。 すみません。 おめでとう。 大村智(「未来を担う少年たちへのメッセージ」から) 大村博士は、イベルメクチンの発見とその功績によりノーベル生理学医学賞を2015年に受賞しました。イベルメクチンは、現在、抗寄生虫薬として毎年4億人に使われ、オンカセルカ症やフィラリア症の予防に貢献しています。さらに、最近では抗ウイルス薬としても使われ、多くの人命を救っています。そして、博士は子どもたちに「望みを捨てないものだけに、道は開かれる」とメッセージを伝えています。

2023年9月3日日曜日

ココロの言葉(299) 未来に必要とするスキルは、 事実を覚えることではなく、 膨大なデータを批判的に評価し、 ノイズに埋もれたシグナルを取り出して整理し、 それに基づいて現実世界を解決する能力だ。 小児青年精神医学者 J.ギード 私たちはいま、激動の社会に生きています。何千年または何万年に一度起こる人類的規模の大変化なのかもしれません。そんな時代に生きる私たちにとって、「学び」とは、どういう意味があるのかが問われています。そのひとつのヒントがこの言葉に示されています。「十代の脳の謎」から。

2023年8月27日日曜日

ココロの言葉(298) 地獄とは、一切の関係が断たれた状態のこと。 カトリック司祭 加藤智 キリスト教カトリックの教義では、「地獄」とは、人間はもちろん、すべての存在とのつながりが失われた世界であるという。社会的とのつながり、そして神仏とのつながりがなく生きることは、まさに精神的に「地獄」に生きることになると。その反対に、対等で豊かな人や聖なる存在とのつながりがある世界で生きることが、「天国」につながると説いている。

2023年8月20日日曜日

ココロの言葉(297) 社会的ネットワークとの強固なつながりをもたないことは、 タバコ一日16本以上の喫煙、アルコールの過剰飲酒、また、運動不足、肥満、 そして、大気汚染が充満した地域に住むよりも死亡リスクが高くなる。 「社会的関係と死亡リスク:メタ分析研究」(2010)から 人との社会的な関係性が、私たちにどのような影響があるかを総合的に調査した研究論文の結論です。日々のQOL(生活・人生の質)はもちろん健康と病気といった命そのものにも大きな影響を与えることが実証されました。ヒトが人間らしく生きるために、他者とのつながりがいかに大切かに気づかせてくれます。人はひとりでは健全に生きられないと―。

2023年8月13日日曜日

ココロの言葉(296) 学びと探究心という大いなる本能を目覚めさせると、 人生は瑣末で平凡なものから 雄大なものへと変容していく。 アルベルト・ヴィヨルド 医療人類学者のヴィヨルド博士は、南米のアンデス山脈のシャーマンの下で研究と修行をしました。現在は、その知恵を活用してエネルギーメディスンとして、社会貢献活動をしています。内面から湧きあがってくる探究心をもって学ぶことは、私たち一人ひとりの生命と人生を神聖なものにしてくれると。『シャーマン、ヒーラー、賢者』から。

2023年8月6日日曜日

ココロの言葉(295) 人はひとりでは成長できない。 ありのままを十分に表現し、 他人と仲間と一緒に生きると実感し、 満足できる人生の道を自分で切り開くには、 絶対的に他者が必要だ。 ジャンニ・シオー=ファクシャン(心理療法家) 今日、「ギフテッド」と呼ばれる子どもたちの存在が知られるようになりました。天から与えられた才能(ギフト)を社会のためにいかに活かすかが、いま注目されています。全人口の2%の割合でいるとされ、特異な能力と鋭敏な感受性を備えています。それゆえに、社会的な生きづらさを抱えています。そんな彼らへの一番のサポートは、「寄り添うこと」であると。『大人のギフテッド:高機能なのに、なぜ生きづらいのか』から。

2023年7月30日日曜日

ココロの言葉(294) 苦しみから抜け出すたった1つの方法は、 他の人を喜ばすことだ。 自分に何ができるかを考え、 それを実行すればよい。 アドルフレッド・アドラー(1870―1937) 20世紀の初期に「個人心理学」の理論を提唱し、ウイーンに児童相談所を開設し、子どもの成長を支援した精神科医です。日本では「アドラー心理学」としてよく知られています。他者への配慮と貢献が、自分自身の幸せをもたらし、社会の平和にもつながることを説いています。

2023年7月23日日曜日

ココロの言葉(293) 「科学的に証明されていないことは信じない」という姿勢もとらわれです。 「科学的」とは、仮説を立てて、繰り返し実験などを通し、 そのデータを分析し、一定の結論を見いだすことですが、 この世は、分析できないことばかりではないでしょうか。 矢作直樹(東京大学名誉教授) 東大医学部の教授であり、同病院救急部集中治療部長を2016年までされていた矢作氏の言葉です。日々ひとの生死に直面していると「科学的」に説明できないことの方が多く、「自分はなにも知らない」ということを自覚する謙虚な姿勢でいたいものだと語っています。知らないことを、ないものにしないことの大切さを教えてくれます。

2023年7月16日日曜日

ココロの言葉(292) 信頼できる人に承認されてこそ、 自由に行動する勇気を持つことができる。 山下伸二『心理療法の精神史』から 私たちは、日々を人と人とのつながりで生きています。まさに漢字で「人間」と表現される存在です。そして、他者からの承認によって、自分の存在価値を確認しています。安全で、安心な人間同士のつながりが、心と魂の回復と成長に必要な要因であり、自由に生きることにつながります。

2023年7月9日日曜日

ココロの言葉(291) 穏やかな身体の状態が、 ポジティブな社会関係をつくり、 ポジティブな人間関係が、 穏やかな身体の状態をつくる。 ポリヴェーガル理論の知見 私たちの生命を維持している自律神経系は、交感神経と副交感神経で成り立っていています。副交感神経は迷走神経とつながっていて、二つのルートがあります。その働きをポリヴェーガル(多重迷走神経)理論と言います。この神経系のバランスが、心身の状態を形成しています。そして、この影響は、社会的な人間関係のつながりとも関係していることがわかってきました。つまり、個人の神経の状態と社会的なつながりは相互関係していると。

2023年7月2日日曜日

ココロの言葉(290) レジリエンスは、本来的な人間関係にかかっている。 レジリエンス研究の知見 この半世紀における心理臨床の主な研究テーマのひとつが、レジリエンスです。レジリエンスとは、「回復力」を意味し、日常生活でのさまざまな困難(トラブル)や人生での逆境(ピンチ)に対して、なんとか乗り越えていく力です。この力を形成する要因は、個人的な素質や努力よりも、人間関係によって育成されることがわかってきました。すなわち、私たちの生きていく力は、他者との信頼関係でつくられるということです。

2023年6月25日日曜日

ココロの言葉(289) 辛いことを耐えた経験は、無駄にならない。 いろいろな苦労が人生を豊かにする。 フジコ・ヘミング 言葉には、その人の経験が含まれています。それを日本語では「言霊(ことだま)」といいます。世界的なピアニストの言葉には、この言霊が伝わってきます。ピアニストとして生活ができるようになる前に、病院の清掃をしていた経験が、人の魂を揺さぶる演奏に表現されています。(『くよくよしない』から)

2023年6月18日日曜日

ココロの言葉(288) ある種の場所が消えるとき、 ある種の経験も消える。 社会学者 レイ・オルデンバーグ 私たち人間は、社会的生物であるために、外的な環境と内的な人間関係の影響を受けて生きています。それゆえ、自分が所属する集団での経験によって人生が形成されます。そうした人と人との交流する場所がなくなれば、人生での経験もなくなるとコミュニティ研究の社会学者はいいます。(『サードプレイス―コミュニティの核となるとびきり居心地の良い場所』から) 

2023年6月11日日曜日

ココロの言葉(287) いまやただ知っているだけでは不十分である。 これまで自分が哲学や理論として学んできた知識を応用し、 自分なりに解釈して実証していく時代になった。 ジョー・ディスペンザ博士(神経科学者) 教育現場において、Chat-GPTの利用をどのようにしていくかが世界中で検討されています。このAI技術が学習の意味を変えることは明らかです。少なくとも、従来の知識の詰め込み教育は衰退していくでしょう。膨大な情報の分析と整理を瞬時に提供してくれるこの新技術を私たちが、いかに活用していくかが問われています。学習のパラダイムシフトが起きています。

2023年6月4日日曜日

ココロの言葉(286) ひとりでも私は生きていけるけど でもだれかとならば 人生ははるかに違う 中島みゆき「誕生」(1992年) 世代を超えて多くの人に聴かれ、カバー曲として歌われている中島みゆきの1992年作品「誕生」の最初のフレーズです。そして、最後のサビの歌詞は「Remember 生まれたこと Remember 出会ったこと Remember いっしょだったこと    そして覚えていること」。私たち人間が生きるとは、他者とのつながりであり、だれもが生きていること自体に意味があることを伝えているように聴こえます。

2023年5月28日日曜日

ココロの言葉(285) 生身の人間同士のやりとりには、 言語化できない、 ものすごく多い量の情報が、 相互に行き来しているのです。 武術研究家 甲野善紀 私たちの対面での会話では、通常、言葉では表現できないことがコミュニケートされています。言語化されないしぐさや表情などが五感を通して、話し相手に感知されます。この言語化されない伝達をノンバーバル・コミュニケーションといい、私たちの対話の約9割を占めていると言われます。ポストコロナの社会で、相互理解のために再評価すべきことでしょう。

2023年5月21日日曜日

ココロの言葉(284) プロフェッショナルとは、 日常のありのままを尊び、愛おしさを知っている人。 それを大切に積み重ねられる人、それを横で楽しめるひと。 チャイルド・ライフ・スペシャリスト 佐々木美和 チャイルド・ライフ・スペシャリストとは、病気で長期の入院生活をしている子どもたちに医師や看護師などの医療職とは異なる立場からサポートする専門家のことです。 現在、日本には50名程いて、小児病棟で活躍しています。生死にかかわる病気と日々向き合っている子どもたちが教えてくれること、それは「日常生活を全力で生きて、楽しむこと」だと。(NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」から)

2023年5月14日日曜日

ココロの言葉(283) 頭が良いという価値観が、すごくもてはやされている。 あなた頭がいい、あなた頭が悪い。 ChatGPTは、それすらも無効化してしまう。 なぜなら、AIに比べたら、みんなバカだから。 そうなったら、なにが人間に必要とされるのか? どれだけ人にやさしいとか、どれだけ愛されるか、ということになる。 映画監督 紀里谷和明 2023年の作品「世界の終わりから」で話題の監督のストレートな言葉です。今後、私たちは、どんな学びを必要としているのかのヒントになります。従来のように、知識量が多いのが「頭がいい」は通用しなくなるでしょう。では、なにか? それがいま問われています。

2023年5月7日日曜日

ココロの言葉(282) よく生きるに必要なのは、学力だけではなく、 「僕(私)って素敵だ」と思えることじゃないかなあ。 そう思える経験がたくさんできる教育だったらいいな、と思っています。 ピアカウンセラー 山口政佳 障害者のグループホームでサービス管理責任者をしていて、発達障害の当事者でもある山口氏のメッセージです。子どもが成長するためには、学力は必要条件ですが、自己肯定感は、よりよく生きるための十分条件であり、教育の両輪の輪といえます。「自分って素敵」といえる学習支援ができたら素敵です。(『ADHDの僕がグループホームをつくったら、モヤモヤに包まれた』より)

2023年4月30日日曜日

ココロの言葉(281) 音楽は、縦軸のハーモニーと横軸のリズム そしてこの二つが織りなすメロディによって形成されている。 音楽家 久石譲 ジブリ作品のアニメ映画の作曲を担当している久石氏の言葉です。ハーモニーとリズムとメロディが音楽を創造し、私たちの魂に響いてくる。それがアート(芸術)であるといいます.シュタイナー教育では、教育とはアートであり、学校教育を教育芸術と呼んでいます。教育活動が子どもの魂に響いた時に、芸術となるのかもしれません。

2023年4月23日日曜日

ココロの言葉(280) 人間は自分の能力をほとんど使わずに暮らしている。 さまざまな能力があるにもかかわらず、ことごとく活かされていない。 自分の能力の限界に挑戦することもなく、適当なところで満足している。 人間はだれもがはかりしれない能力を持っているが、 その能力を活かしきることができるのは、 ごくひとにぎりの並はずれた人々にすぎない。 心理学者 ウイリアム・ジェイムズ(1842-1910) この世で一番もったいないことは、自分が持っている能力を実生活で活かしきれていないことでしょう。それが無意識レベルでストレスとなって、生きづらさをもたらしています。本当の意味のある学び―学習支援とは、私たち誰もが持っているこの能力を開花させるためのサポートといえます。

2023年4月16日日曜日

ココロの言葉(279) 好奇心さえもっていれば、 心身の元気と若さを保てます。 神経科学者 ティナ・シーリング 『20歳のときに知っておきたかったこと』の著者であるスタンフォード大学のシーリング博士は、どうしたら「やる気」に火をつけることができるかを説いています。それには、3つのスイッチを入れることだという。「楽しいことに挑戦する」「(少しだけでも)行動を変える」「失敗しても大丈夫と思う」の要因です。これらは、学び続けるための条件でもあり、その核となるのが好奇心と言えます。

2023年4月9日日曜日

ココロの言葉(278) 金も地位も名誉も全然役に立たないんですね。 役に立つのは、経験と生きてきた情熱とそれに魂だけなんです。 それだから動物との触れ合いはやめられないんですね。 畑正憲(1935-2023) ムツゴロウとして知られた畑正憲氏が、1988年にアフリカで野生のライオンと生死をかけて格闘し触れ合った後の言葉です。アフリカの魂をもらったと熱く語っています。いま、私たち現代人が忘れてはならない名言でしょう。

2023年4月2日日曜日

ココロの言葉(277) 子どもが信頼できる大人と一緒にいて、 本当に安全だと感じられることで、 社会交流行動が自然に生まれ、 無意識の中で戦ったり、逃げたり、 凍りついたりする必要がなくなる。 心理学者 モナ・デラフーク  ヒトは、なにか危機に直面したときに、本能的に闘争か逃走または凍りつくかします。 子どもが問題行動を起こすのは、安全と安心を求めているからと言われます。そして、その反対に、安全で安心の環境では、社会的な人と人との交流を促し、自分を成長させる行動を自然にとるようになります。この考え方は、ポリヴェーガル理論として知られています。

2023年3月26日日曜日

ココロの言葉(276) 発達段階に応じた親や仲間との遊びは、 実行機能と向社会的な脳を構築する 社会的・情動的スキル、認知スキル、言語スキル、 そして自己調整のスキルを促進するための特異な機会である。 アメリカ小児科学会(2018) 子どもにとって、日常生活での「遊び」こそが、人間的な成長のために必要な学習であることを実証したと小児科学会が研究成果を公表しました。すなわち、安全な環境で、安心できる人との関わりが、子どもにとって最適な学びになるということです。特に、自分の言動を律する自己調整のスキルは、人と人との関係でしか育てることができない大切な能力です。ポジティブな人間関係が私たちを成長させるのは、大人でもまったく同じことでしょう。

2023年3月19日日曜日

ココロの言葉(275) 世の中の大事なことって、 たいてい面倒くさいんだよ。 アニメーター 宮崎駿 『風の谷のナウシカ』や『となりのトトロ』などの世界的ベストセラー作品を生み出した映画監督の言葉です。私たちの成長の糧になることは、確かに面倒くさいものです。その典型が「学び」かもしれません。面倒くささを乗り越えたその先に創造的な世界が開かれ、それが魂の栄養になるのでしょう。

2023年3月12日日曜日

ココロの言葉(274) 大事なことは、まだ誰も見ていないことを見ることではなく、 誰もが見ていることについて、 誰も考えたことがないことを考えることである。 理論物理学者 シュレディンガー(1887-1961) この言葉は、哲学者ショウペンハウアーの箴言が元になっているとされていますが、学びの真髄とは何かを教えてくれます。すなわち、本当の学びとは、誰も考えたことがない視点で、ものごとを見て、自分にとって新しい発見になる体験であると。AI(人工知能)時代のいま、そんなヒトとしての学びが求められています。

2023年3月5日日曜日

ココロの言葉(273) 刺激と反応の間には空白がある。 その空白の中で、私たちは自分の反応を選択できる。 そうして選び取った対応にこそ、成長と自由がある。 精神科医 ヴィクトール・フランクル(1905-1997) ナチスの強制収容所の体験を描いた世界的ベストセラー『夜と霧』の著者であるフランクル博士は、人生の意味を探究する実存療法を心の治療に取り入れました。どんな状況にあっても、私たちは与えられたその状況に対して、自分の意思で選択することができることを示しました。そして、その選択に人間存在の自由と魂の成長があると。

2023年2月25日土曜日

ココロの言葉(272) 絵を描く人は、見えないものを見ようとし、 作曲をする人は、聴こえない者を聴こうとする。 音楽家 武満徹(1930―1996) 武満氏のこの言葉は、藝術とはなにかについて、その本質を表現しています。これと同じことが、教育についてもいえます。すなわち、教育をする人は、子どもの中にある見えないものを見ようと、聴こえない声を聴こうとすると―。いま、そんな藝術的な教育が求められています。

2023年2月19日日曜日

ココロの言葉(271) 個人の権利や尊厳に配慮した姿勢は、 それ自体が治療的である。 精神医学者 中井久夫(1934-2022) この心のケアを尊重した中井氏の言葉は、そのまま教育にも当てはまります。すなわち、一人ひとりの子どもの人権を尊重し、対等な関係で向き合うことは、それだけで教育的であると。なにをするかよりも、いかに向き合うかが、対人関係で大切であることを示唆しています。

2023年2月12日日曜日

ココロの言葉(270) 『世界価値評価』(2917~2022)によれば、 幸福度が高い国や地域ほど、 人生の選択の自由度が高い傾向がある。 聖路加国際大学大学院教授 中山和弘 中山和弘博士の研究によると、日本の幸福度は世界88カ国の中で、下からニ番目の86番目になる。その低い原因は、日本人の意思決定力の苦手さにあるという。それは、自分のことは自分で選ぶ権利と尊厳をもち、生きていくスキルです。いま、ポストコロナの社会において、日本人に求められているものでしょう。

2023年2月5日日曜日

ココロの言葉(269) そばにいることがひとつ、 そばにいないことがひとつ ケアメソッドの知見(『豊かな老いを支えるやさしさのケアメソッド』より) 「人生の最期をいかに豊かに過ごす」という課題に日々向き合っている施設の利用者とスタッフから見出された言葉です。他者との距離が、人と人との心身の健康と安心にいかに大切かを教えてくれます。子どもとの対応はもちろん、日常の人間関係にも役立つ知見です。

2023年1月29日日曜日

ココロの言葉(268) フレンドシップ・リセッション;身の回りに親友と呼べる友人がいない人たちが増加していること。友情関係が減退している現象を意味する造語。 先進国では、特に米国と英国で、この現象が2000年代になって増大しています。2022年米国では、成人男性では15%、女性では10%、また英国では、約20%の大人が「親友がいない」という調査結果が出ています。現代社会の孤立化が深まっていることが可視化されました。実際、私たちヒトにとって他者との親密なつながりは、適切な体重よりも、禁煙よりも、心身の健康(ウエルビーイング)にとって必要な要因であるとされています。

2023年1月22日日曜日

ココロの言葉(267) 不登校やゲームへの熱中、リストカットや過剰服薬を 単に問題行動と見なすだけではなく、 子どもの自己救済の試みという可能性を想像できる大人は、 果たしてどれだけいるのか。 松本俊彦(国立精神神経医療研究センター精神保健研究所) 最近、困っていて、だれかの助けが必要な状況なのに、「助けて」と言えない状況が、子どもにも大人にもしばしば起きています。「困っている。助けて」と相手にいったりするのは、恥ずかしいことであり、迷惑をかけてしまうことになると。同じことが学習場面でもよく見かけます。正直に「わからない」といえないケースが―。いま、素直に弱音を吐ける関係が求められています。(『こころの科学』2022・11月号より

2023年1月15日日曜日

ココロの言葉(266) 他人を頼ることができる人は、そうではない人に比べて、 健康で、幸福で、裕福であり、 さらに子どもの学校では成績もよく、 地域では、反社会的な行為による被害も少ない。 「社会関係資本」研究の知見 地域で他者とのつながりがある人たちは、教育、経済、健康、治安の面で、関係を持たない人たちに比べて、生活が良好(ウエルビーイング)であることがわかっています。それが、子どもたちの学習形成に大きな影響を与えます。社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)として、地域でのつながりが、いかに大切かを示しています。(ジョン・フィールド『社会関係資本』より)

2023年1月8日日曜日

ココロの言葉(265) 自立は、依存先を増やすこと。 熊谷晋一郎(東大先端科学技術センター) 東大先端科学技術研究センターでの当事者研究から判明した知見です。世間では、依存する対象が少なくなることが「自立」だと思われています。しかし実際は、社会的に自立している人は、たくさんの依存先があり、相互依存で生きていることがわかりました。逆に、依存症という病気の人は、例えばアルコールやギャンブルのように依存対象が一つになって、生活が破綻する傾向があります。いろんな人とつながり、依存できることが、本当の社会的な自立なのでしょう。

2023年1月1日日曜日

ココロの言葉(264) 人生における最大の後悔とは、 なにかバカなことをしてしまったということではなく、 なにかをするチャンスを逃したことだ。 馬渕睦夫(1946年生、元ウクライナ大使) 現在、YouTube「ひとりがたり」で人気を集めている馬渕氏が、人生訓として伝えられている言葉を紹介したものです。だれのための教育なのかよくわからなくなっている日本の学校教育を子どもの魂の進化のために改革していくのに役立つメッセージです。『道標(みちしるべ)』より。2023年元旦