2017年12月17日日曜日

ココロの言葉(16)

世界は素敵に成長したHSPを必要としている。
臨床心理学者 アーロン博士

HSPとは、英語で「ハイヤー・センシティブ・パーソン(とても敏感な人)」のことで、心理学の性格タイプのひとつです。ですから、心の障害でも病気でもありません。「敏感気質」「敏感すぎる性質」などの特性です。
大多数の一般人に比べると、感受性が高く、それゆえに、他者や環境からの刺激に過敏に反応してしまう傾向があります。これまでは「神経質」とネガティブに理解されてきましたが、現在そのポジティブな性質が評価されるようになってきました。
アメリカの研究では、全人口の約20%、5人に1人が、このHSPと推定されます。日本での調査がないのではっきりした数字はわかりませんが、気質的にアメリカよりも多いことが予想されます。
そして、いま、HSPのポジティブな特性が社会的に注目されています。アーロン博士は、次のように言っています。
「慎重に考え、深く感じ、ささいなことに気づき、最終的には大局を見ることができる人材を、今ほど必要としている示談はありません。これからもっと必要になるでしょう」

学校生活にうまく適応できずに、不登校になっている子どもたちの中に、このHSPの性質を持った生徒がかなり多くいます。いま、その理解とサポートが求められています。

2017年11月5日日曜日


ココロの言葉(15)

 

ごく標準的な教え方では、

全然わからない子どもでも、

別の教え方や別の学び方をすると、

ぐんと伸びるということがあります。

脳科学者 茂木健一郎

『5歳までにやっておきたい本当にかしこい脳の育て方』より

 

約100年前の明治時代から日本の学校教育は、学年と学級を中心にした集団教育でした。いまも基本的にこのスタイルで運営されています。これまでは、このようなやり方でうまくやっていけたのですが、現在ではさまざまな不適合が生じてきています。

 そのひとつが、学習法です。一斉授業によるやり方では、理解できない子どもたちが増えてきています。決して知的能力が低いわけではないのに、集団での学習になじめず、つまずいてしまいます。

 このような場合、学習法をちょっと変えるだけで、これまで「できない」ことが「できる」ようになります。つまり、苦手科目が得意科目になります。

 一人一人の可能性を発見する手助けができる活動ができればと思います。

2017年10月23日月曜日


ココロの言葉(14)

 

一歩を踏み出せば

見えてくる景色が変わる。

行動こそが不安を打ち消してくれる。

日野原重明『生きていくあなたへ』から

 

三十数年目になりますが、今回の言葉で紹介した日野原先生から、健康教育の講義を受けていました。そこで、いのちを最優先するライフプランニングの考え方を学びました。

 私たちは、将来の不安を抱いて生きていますが、「一歩を踏み出せば」過去の後悔と未来の不安が軽減されるものです。このことは、教科学習についても、同じことが言えます。

いま、ここで、「できない」「めんどう」という気持ちを一歩踏み出せば、どうにかなるものです。これは、マインドフルネスを利用した効果的な学習法になります。

 そんなことを子どもたちに伝える教育の場があってもいいかなと思います。

2017年10月15日日曜日


ココロの言葉(13)

 

エビデンスに基づいていたら、

10年遅れになりかねない。

三好泰樹『介護のススメ』より

 

いま学校臨床の現場では、大きな変化が見られます。その一つの兆しが子どもたちの「多様性」です。

このために、従来の集団による一斉授業に限界がきています。特に、英数国という主要教科にそれが現れています。かつても個人の能力の差はありましたが、なんとか授業が成立してきました。しかし、いまは能力差だけの問題ではない要因が出てきて、授業が機能不全状態を起しています。

そのことに気づいている教師がどのくらいいるでしょうか。生徒は、無意識ではすでに実感していますが、どう訴えていいかわからない状態です。

 学校はいま、一人一人の多様な個性にいかに応えていくかが試されているのでしょう。

 

2017年9月13日水曜日


ココロの言葉(12)

 

人生を幸せにするのは、なにか?

それは、よい人間関係であることが、

75年間の研究でわかりました。

心理学者 ロバート・ウオールディンガー

 

ハーバード大学の長期75年間に及ぶ成人発達研究によると、「幸福」な人たちには、3つの要因が見られたといいます。それは以下です。

1)良好な人間関係:人生での苦難を緩和してくれる

2)心身の健康維持:ストレスと加齢を緩和する

3)脳の保護:記憶障害の予防につながる

これらの基本となっているのが第1の要因の「よい人間関係」です。その影響で二番目と三番目の要因が形成されます。すなわち、いい人生は、人間関係で築かれるということです。

 この研究調査からわかることは、人間存在とは、漢字の意字義通りに「人と人との間」であることです。そして、私たちの「学び」も、実は人間関係が大きな影響を与えることに気づかせてくれます。

 

 

2017年9月6日水曜日


ココロの言葉(11)

 

私たちは、人生をすっかり変えなければ、

幸せになれない、健康になれない、あれもこれもできない、

と思い込んでしまいます。

しかし、マインドセット(*)の科学が証明していることが、逆の方法です。

まずは、自分の考え方を変えれば、望んでいるような変化が、

つぎつぎと起こり始めるのです。

健康心理学者 ケリー・マクゴニカル

 

「マインドセット」とは、自分の中にある思い込みのことです。すなわち、自分の価値観を反映した中心的な信念を意味します。たとえば、「ものごとは、こういうものだ」「こういときは、こうしなければならない」といった考え方です。

 私たちは、他者や社会を変えることはできませんが、自分自身を変えることは、自由にできます。この原理は、自分の能力にも当てはまります。たとえば、「できる」と思えば、それができる可能性が高まりますが、「できない」と思えば、逆に低くなります。

 すなわち、ものごとについて、どう考えるかによって、ものごとから受ける影響は変化するのです。ポジティブに考えれば、ポジティブになり、その反対にネガティブに考えれば、その結果はネガティブになる傾向があります。

 この心理学的発見は、学習効果を高めるのに利用できます。成績を上げるために必要なのは、「やればできる」と思えるようになることです。そんな学習支援をしていきたいと思います。

 

2017年8月30日水曜日


ココロの言葉(10)

 

「学校なんか行かなくてもいい」という言葉は非常に大切だし、真理でもある。

                      曽野綾子「透明な歳月の光」より

 

 現在日本では、学習の場は、公の学校と民間の学習塾に限られていますが、もっとさまざまな学習の場が必要とされています。その背景にいまの子どもたちの多様性が考えられます。学校臨床で子どもたちの支援をしている教育関係者の多くが、このことを実感しています。

 実際、いまの集団教育を柱とした学校の教育活動の限界に対して、多くの子どもたちが息苦しさを感じ、悲鳴を上げています。この傾向は、「発達」の特性を持った子どもたちに顕著に表れています。現在公立学校では、特別支援教育という形で学習支援がなされていますが、あまりに不十分な状態です。

 いまの学校教育にはなじめず、不適応を起こしているが、「学びたい」と思っている子どもたちの真のニーズに応えるサポートが求められています。そんな可能性を無料塾というなんの制約もないボランティアの教育活動で探っていけたらと思います。

2017年8月17日木曜日


ココロの言葉(9)

 

不登校は、「いのちの非常口」です。

心理カウンセラー 内田良子

 

 日本では、学校の休み明けに、たくさんの十代の子どもたちが、自らいのちを絶っています。内閣府の集計による過去42年間(1972~2013)の18歳以下の日別自殺者数をみると、毎年9月1日にその人数が最大になっています。この日は通常、二学期が始まる日です。次に多い月は、4月の初旬です。言うまでもなく春の新学年の時期です。

 この4月と9月に、「学校を休むのはいけないこと」「自分は生きる価値がない」と自分を責めて、各月で100人前後の子どもたちが死を選んでいます。ここには、自殺未遂の人数は含まれていません。この人数も加えたらかなりの人数になることが推定されます。

 すべての子どもたちに「学校を休む権利」があります。これは、「児童の権利に関する条約」で国際的に保障されています。日本は、1994年に批准し、その5月から発行されています。一般的に「子どもの権利条約」と呼ばれています。

 そこで、周囲の大人たちができることは、「学校を休む権利」があることを理解することです。そして、そのスタンスで子どもたちに対応することです。そうすることで、子どもたちが責められることなく、気持ちが少し楽になり、どうすればいいかを冷静に検討できます。登校するか休むか、または別な方法か、さまざまな選択肢があることがみえてくるでしょう。

 あまり無理しないで、ゆっくり休むことも自分の権利だとわかるだけで、若いいのちを守ることができます。

 

 

 

 

2017年7月23日日曜日


ココロの言葉(8)

 

人生にどんな状況が訪れるかを決められないが、

どのような態度で向き合うかを決めることができる。

インド哲学ヴェーダの教え

 

いま日本の社会では、貧困格差が話題になっています。政府も「子どもの貧困対策推進法」を施行しています。確かに経済的な貧困は、生活の質を低下させますが、それがイコール精神的な貧困を意味しません。子どもたちをサポートする上で、このことはとても大事なポイントになります。

私たちは、通常第三者にお金の支援をすることはできませんが、精神的な支援をすることは、その意思があれば誰でもできます。

無料塾での学習支援もその一手段と考えています。

2017年7月10日月曜日


ココロ(7)

 

ものごとについてどう考えるかによって、

そのことから受ける影響は変わる。

最近の認知科学研究の成果から

 

学校で思春期の子どもたちの姿を見ていると、ストレスがあまりなく順風に見える生徒よりも、ストレスをかかえて逆風を生きている生徒の方が、たくましく大人に見えることがしばしばあります。そのような生徒のカウンセリングをしていると、その生徒が直面するストレス状況にチャレンジして逆境を乗り越えていこうとする姿勢に心打たれます。

人生で避けられないストレス状況にチャレンジしている成長していく子どもたちにかかわり、サポートできることに教育実践の醍醐味を感じます。

2017年6月26日月曜日


 

ココロの言葉(6)

 

親が自分のことで困っている姿をみるのが、一番の悩みだった。

不特定多数の不登校体験者の声

 

不登校をすることは、よくないことなのか。

学校へ行かない、または行けない子どもに問題があるからなのか。

その理由と責任を子どもに求めることが適切なのか。

いま改めてこのことを考えてみなければならないのではないでしょうか。

 

そのことを客観的に検討するのに役立つのが『未来の学校』(*)という本です。著者は、ハーバード大学のイノベーション研究所の研究員のトニー・ワーグナー氏で、21世紀の学校教育に求められているものをさまざまな研究成果を踏まえて提案しています。

 著者は、これからの未来社会を創造していく子どもたちを育てる優れた授業の要素を、次の三つ挙げています。

1)生徒自らが学び続ける能力の育成をすること

2)子どもたちの学びの動機付けをすること

3)学習の達成度をペーパー試験ではなく、「パフォーマンス評価」ですること

 

 これら3要素は、まさに学校教育の実践に求められていることであることは、学校臨床に携わる人たちが実感していることです。

 いま学校教育が、抜本的に変わらなければならないときにきています。

最近、学校で不適応を起こす子どもたちの姿を見ていると、変わらなくてはいけないのは、学校の古いシステムではないか。子どもたちを無理やり従来のやり方に適応させるのではなく、子どもたちのニーズに適した教育支援が求められているのでしょう。

 不登校の子どもたちは、現代社会における「炭鉱のカナリヤ」として教育的危機とその改善を訴えかけているように思います。

 

 *『未来の学校』トニー・ワグナー、陳玉玲訳、玉川大学出版会、2017

2017年6月19日月曜日


ココロの言葉(5)

 

いじめがあるのに気がつかない、そんなことがよくあるものです。

いじめはある順番で進行していくのですが、この順番が実に巧妙で、

だから気がつかれにくいのです。

  中井久夫(『いじめのある世界に生きる君たちへ―いじめられっ子であった精神科医の送る言葉』から)中央公論社、2016

 

精神科医で、いじめられ体験がある中井久夫氏は、いじめが進んでいく段階を次の三つに分けています。

第一段階は、「孤立化」で、いじめのターゲットにされ、その理由を周囲に周知されます。

第二段階は、「無力化」で、反撃は無駄だと被害者に観念させます。

第三段階は、「透明化」で、いじめが普通の風景になり、見えなくなってしまいます。

これらのプロセスを経て、被害者を奴隷のような人間にしてしまうのが、いじめの構造です。

では、その対策は、どうすればいいのでしょうか。中井氏は、シンプルに以下のように語っています。

 

「まずいじめられている子どもの安全の確保であり、孤立感の解消であり、二度と孤立させないという大人の責任ある補償の言葉であり、その実行である。」

 

そして、本書では、もうひとつ注目すべき言葉が書かれています。それは、現代精神医学のマスターセラピストの一人といわれるミルトン・エリクソンの指摘です。心理療法を学んでいる弟子が、子どもの面接を二週間延期したことに対して、「子どもにとって二週間は、永遠に等しい」と叱っています。

 

困っている子ども、被害にあっている子どもにとって、苦痛な時間は永遠に続くように感じます。ですから、周囲の大人たちは、子どものSOSに早期に気づき、迅速に必要なサポートをすることがいかに大切かを教えてくれます。

2017年5月28日日曜日


ココロの言葉(4)

 

あなたの子どもにかける期待が、

学びの達成、ひいては子どもの人生に

大きな影響を与えます。(*)

 

この言葉は、教育心理学では、もっとも知られている「ピグマリオン効果」の内容です。

人間の成長と社会での成功と強く相関関係がある要因は、本人と支援者の心構えにあることがわかってきました。もちろん、家庭環境や経済状況が関係していますが、決定的な影響を与えるのは、人間関係とその心構えだということです。

子どもたちは、前向きに期待されると、自らもっている力を発揮していきます。そんな周囲の眼差しがある学びの場をつくっていきたいと思います。

*『世界最高の学級経営』ハリー・ウオン/ローズマリー・ウオン、稲垣みどり訳、

東洋菅出版社、2017。

本書は現在、世界8カ国で翻訳され、400万部以上発行されている。

原文は〝The First Days of SchoolHow to be an effective Teacher〟(「学級開き―成果を上げる教師になるために」2009年)

 

2017年5月22日月曜日


ココロの言葉(3)

 

「どんな子どもでも、やる気と能力があれば進学すべきだ。」

首都大学東京・子ども若者貧困研究センター 阿部彩

 

いま教育格差が社会的な問題として話題になってきましたが、その実態はあまりよくわかっていませんでした。それを客観的データを元に「見える化」する研究と政策提言をしているのが今回の言葉の阿部教授です。都内4市区(約2万人)を対象とした最近の調査では、「授業が分からないと感じる子」は、貧しさの度合いが高い世帯に多いことが明らかとなりました。

「授業がわからない」といっても、さまざまな状況や要因が考えられますが、確かなことは、子どもたちが困っているということです。大多数の子どもたちは、ちょっとした周囲の手助けがあれば、その困り感を解消していくことができます。それができる学習支援の場を提供したいと思います。

 

2017年5月18日木曜日


ココロの言葉(2)

 

信頼とか自信とか喜びが生まれるような

そんな関係性をつくっていきましょう。

ミシェル・ロドリゴ

 

今回もNHKの番組「奇跡のレッスン」からの言葉です。ロドリゴさんは、フットサル日本代表の監督もした世界的に有名なカリスマ・コーチです。本番組では文京区にある小学生のサッカーチームを一週間指導しました。

彼の指導法は、子ども自身のハートと頭と体の三つをバランスよく使った練習スタイルです。そして、そのことを実現する環境が、チームの人間関係だといいます。

型だけのルーティーンな練習は、野生動物を檻の中に入れて飼育するようなものだと語っています。特に「ハート」が大事であると強調していました。

これと同じことが教科学習にもまさに当てはまるのではないでしょうか。良好な人間関係が漂っている学習環境が、子どもたち一人一人の能力を高めるという事実は、現場の教師の多くが実感していることです。

子どもたちの秘めたる力を引き出せる場を構築していきたいと思います。

 

2017年5月2日火曜日

ココロの言葉(1)


ココロの言葉(1)

 

背中を押してあげれば、飛躍できる子どもたちがいる。

 

NHKの人気番組「奇跡のレッスン」で、都内の中学男子バスケットボール部のコーチを一週間指導した元NBA選手マグシー・ボーグスさんの言葉です。
NBAの選手といえば、世界のプロバスケットのトップクラスのプレイヤーで、身長は200センチも普通の中で、彼は160センチでした。
そのハンディを克服して第一線で活躍した伝説の人物です。現在はその経験を活かしてコーチをしています。

この言葉は、バスケットの指導だけではなく、子どもたちの支援をするうえで教育の核となる要素が含まれています。
また、次のような言葉も語っています。

「新しい情報を与えると、子どもたちは輝き始める」

今後の甲州無料塾ココロで大事にしていきたい言葉です。