2017年6月19日月曜日


ココロの言葉(5)

 

いじめがあるのに気がつかない、そんなことがよくあるものです。

いじめはある順番で進行していくのですが、この順番が実に巧妙で、

だから気がつかれにくいのです。

  中井久夫(『いじめのある世界に生きる君たちへ―いじめられっ子であった精神科医の送る言葉』から)中央公論社、2016

 

精神科医で、いじめられ体験がある中井久夫氏は、いじめが進んでいく段階を次の三つに分けています。

第一段階は、「孤立化」で、いじめのターゲットにされ、その理由を周囲に周知されます。

第二段階は、「無力化」で、反撃は無駄だと被害者に観念させます。

第三段階は、「透明化」で、いじめが普通の風景になり、見えなくなってしまいます。

これらのプロセスを経て、被害者を奴隷のような人間にしてしまうのが、いじめの構造です。

では、その対策は、どうすればいいのでしょうか。中井氏は、シンプルに以下のように語っています。

 

「まずいじめられている子どもの安全の確保であり、孤立感の解消であり、二度と孤立させないという大人の責任ある補償の言葉であり、その実行である。」

 

そして、本書では、もうひとつ注目すべき言葉が書かれています。それは、現代精神医学のマスターセラピストの一人といわれるミルトン・エリクソンの指摘です。心理療法を学んでいる弟子が、子どもの面接を二週間延期したことに対して、「子どもにとって二週間は、永遠に等しい」と叱っています。

 

困っている子ども、被害にあっている子どもにとって、苦痛な時間は永遠に続くように感じます。ですから、周囲の大人たちは、子どものSOSに早期に気づき、迅速に必要なサポートをすることがいかに大切かを教えてくれます。

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